2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は久しぶりに彼の、いや陽介の家に足を向ける。もう少しで日が沈む。最後にたくさん話をしたかった。
「こんにちは。陽介さん。」
「まだその呼び方なれないな。」
少し照れながら笑う。
「陽介さんに最初にあったとき私はこんな風になるの想像してなかったな。」
「どうしたんだ急に?」
「他愛もない会話だよ。陽介さんは私のことどう思った?」
「最初は愛想がない子だなと思ったよ。でも知っての通り僕は結菜のことが好きになってしまったよ。多分僕はおかしいのかもしれない。」
陽介は苦笑していた。
「そんなことないよ。陽介さんがおかしいんじゃなくて私がおかしいの。」
「いや僕の方だよ。」
「いや私だよ。」
こんな何ともないごく普通の会話が私にはとても幸せに感じる。私なんかが幸せになることはないと思っていた。いじめられていたときは何もできない自分に腹を立て落ち込む。そんな生活を、そんな人生を送っていくのだと思っていた。私のすべてを壊してくれた彼には感謝している。やっぱり私なんかが幸せになってはいけない。
今日もあの日みたいにきれいに星が出ている。でも、今回は彼は来ない。首をいれるための輪を作り、枝に結びつける。そのまま空を見上げるとやっぱりきれいな星が見える。私は考える。最初の頃陽介さんの家で聞いていた曲はなんだっけ?とても脆くて幸せをぎゅっと集めたような曲。私は口ずさんでみる。どうしても名前が出てこない。私はふっと吹き出してしまう。前みたいに彼が助けてくれているみたいじゃないか。
こうして私は死ぬ。私がいなくても彼が幸せになることを私は願った。
あぁ、本当に今日は星がきれいだ。
最初のコメントを投稿しよう!