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「ねえ、もう一度確認のために聞いていい? 人の姿をしている時は、人間と何も変わらないって言ったよね?」
「ええ、ほぼ変わりませんよ。お腹も空きますし、怪我もします」
「ほぼ?」
「天使には年齢という概念がありません。私の場合は見た目そのままに、二十歳くらいの人間を模写しているだけなのです。老化せず、十年後、百年後もこの姿のままです」
年を取らない? 羨ましい……じゃなくて、私がお婆ちゃんになっても変わらないってことよね。私だけが老けるって辛い。
「天使は世界中にいるんでしょ? 恋もするって言ったよね? つまり、人と……えっと、その……結婚してる天使もいるの?」
「いますよ。天使だと隠している場合は、バレないように力を使って、外見を変えていくのが主流です。少しずつ老けていく演技をすると言えば分かり易いでしょうか。全てを終わらせる際は、タクトを持つ天使に頼んで記憶の上書きしてから天界へ帰ります。天寿を全うしたと記憶を変えるのが多いようですね」
やっぱり、世の中に紛れ、素性を隠して結婚生活を送る天使はいた。人間と変わらない生活ができると聞けて、一気に心が軽くなる。
最後は記憶を上書きして天界へ帰る……という事は、シェムハザと生涯を共にして、一緒に天界へ連れて行ってもらう事もできるはず。
「シェムハザ」
「はい」
「呼んでみただけ」
「えっ?」
美空の記憶を読み取ったのだから、私が好意を寄せてると気付いているだろう。
面と向かって好きと言うのは、恥ずかしいから言わないし見せない。でも、偽る必要なんて無いんだ。
守られる存在じゃなくて、シェムハザを守る存在になる。天使の力なんて忘れてしまうくらいに強くなってやる。
「ふふっ、お腹空いちゃった。ご飯食べよ」
「理解出来ませんが、いつもの笑顔に戻ったので良しとしますか」
先にシェムハザをリビングへ向かわせ、机の引き出しを開けた。冷たい風が入り込み、大切に保管しておいた天使の羽がふわりと舞い上がる。それは、咲を助けてくれた時に拾った純白の羽。
「ずっと……一緒にいようね……」
ポケットの中から黒く染まった羽を取り出し、純白の羽と重ねて引き出しを閉める。
心からの願いが叶うと信じて……
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