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 俺は自身の剣をヒネーテに持たせ、丘を登っていた。背中から来るそよ風に振り返ると、丘の下に街が見える。先ほどいた家と同じように、煉瓦造りでおとぎ話に出てきそうだ。彼女の話によると、俺らは魔王を封印する一行として、様々な街でおもてなしを受けているらしい。 「アタシたちが住んでいる家も街から借りているものなんだ」 「魔王を倒す一行っていうのは優遇されているんだな」  会話しているうちに丘の上に到着した。そこには、原っぱが広がっており、遠くには山々がそびえている。ふと、ヒネーテがある一点を指差した。 「見えるか。あれが魔王の棲む場所だ」  指し示す方向には、真っ黒い山が切り立っていた。その場所だけ黒雲が広がり、雷が落ちている。その中央にはこれまた魔王が住んでいそうな城があった。 「その魔王を封印するため、アタシたちは今まで戦ってきたんだ」  そう言って、俺の剣とは別に背負ってきた物の布を取る。それは身体とほぼ同じ大きさの大剣だった。ヒネーテが力強く振ると、風が起こり俺の髪や服が揺れる。その振るう姿をしばらく眺めていた。彼女に出来るのなら、俺にだって・・・・・・。自分の剣を持とうとする。しかし、やはり剣先の方が上がらない。 「なんで。こんなに重いんだ」 「剣が重いんじゃない。イサムの力が弱すぎるんだ」  ヒネーテの言葉に俺は剣を落とす。魔王を倒そうとした勇者なら、もっと強いもんじゃないのか。 「だって、勇者なんだろ、俺」 「勇者と言っても、剣が納められている村にいた若者がサムしかいなかっただけだしな」 「じゃあ、ヒネーテはなんで?」 「そりゃ、国一番の騎士だからな」  肩に大剣を担ぎ笑ってみせた。あんなデカい剣振り回すんだ、国一番でもおかしくはない。でも、剣が全てじゃないはずだ。他に勝てそうなもの・・・・・・。そのとき、あることを思いつく。 「もしかして、俺、魔法とか使えるんじゃないか」  人差し指を動かし、魔法をかける真似をした。しかし、ヒネーテは呆れたようにため息をつく。 「いや、使えないぞ。というか、魔法に関してはマギサが本職だからな」  生死を操作できるんだから、それはそうだよな。というか、剣とか魔法とかある世界で生き返ったのに、凡人だったのか。
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