相席より愛はこめられないけれど

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 からあげ定食の載ったトレーを持ち、右往左往していた。  目の前に広がる座席は、制服を着た学生たちに占拠されている状態だ。ようやく空きができたと思っても、上級生たちが鋭い一瞥をよこし、すぐさま支配してしまう。  午後の授業から空腹のメロディの奏でるわけにもいかず、しぶしぶ学食にやってきたはいいものの、状況は圧倒的に不利だった。やはりここは入学したての一年生がくる場所じゃないらしい。わたしは溜息をつき、お弁当を忘れたことを後悔した。  おまけに、一人できたから必然的に相席になってしまう。しかも相手は見知らぬ上級生ばかり。一年生らしき姿は、わたし以外見当たらない。これは非常に気まずい。もし、わたしがフレンドリーな性格だったり、図太い性格だったりすれば簡単に座れるのだろうけど……。あいにく、わたしはそのどちらでもない。  もー、こんな学食デビューがあってたまるかー! わたしは心中毒づきながら、あっちにこっちにとせわしなく歩きつづけた。はたから見れば、さぞ滑稽に違いない。一方の当事者であるわたしは、焦るわ、目立つわ、恥ずかしいわ、情けないわ、で泣きそうになっていた。
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