相席より愛はこめられないけれど

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 ああ、このからあげの香ばしいにおいさえ恨めしい。そう感じはじめたとき、ふいに呼びとめられた。 「そこの一年生! 一緒に食べようぜ。ここ空いてるから」  馴れ馴れしい態度で、わたしを手招きしたのは、見知らぬ男子であった。  わたしを一年生と呼ぶからには、おそらく先輩なのだろう。 「は、はあ」  頼りない返事をし、わたしは彼が指さす席へおずおずと腰をおろす。周りの視線が少し怖いけど、このチャンスを逃すわけにはいかない。 「ど、どうも。ありがとうございます」  わたしは小さくお辞儀をしながら、改めて彼を見た。運動系の部活に入っているのだろうか、がっちりとした体格をしている。向かいあって座ると、少し圧倒されそうになった。 「礼はいいよ。早く食べないと、せっかくの昼飯が冷めちまうぜ」  ニッと笑うと、彼は自分のカレーライスを食べはじめた。  彼の言うとおり、温かいうちに食べようと、わたしは自分のからあげを頬張る。 「うまっ」
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