当世勇者事情

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 勇者は出自を問われないし、コネも必要ない。ただ、突然勇者を名乗っても、そうそう周囲は認めてくれないだろう。  勇者を名乗る場合、大昔の伝説の勇者や国王の烙印の子孫といった確かめようのない出自を作ったり、救世主の出現についての予言を研究してそれに近いキャラクターを装ったりなどの工夫があったほうが善い。  あなたが勇者になりたくて田舎の生まれであったとしたら、とてもラッキーだ。昔から英雄や貴人は鄙びた場所に生まれたり隠されたりするというイメージがある。  もしあなたが城下町や港町、街道沿いの、ある程度賑やかな場所の生まれ育ちであったなら。慣れ親しんだ街を離れ、山奥や無人島などに一定期間こもり、その後、別人に扮して勇者となるのがベターだ。勇者のプロフィールに現実味のある平凡な成育環境は邪魔でしかない。  誰でもなれるだけに、自己プロデュース能力は勇者にとって生き残りのカギだ。むしろ勇者の一番の仕事は自己プロデュースと言ってもいいくらいだ。
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