当世勇者事情

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 タイミング読む。そう、これもまた勇者として生き残るのに必要なスキルだ。  村や町で依頼を受ける時も、タイミングが大事だ。どこぞの村でモンスターが出始めて困っているという噂を聞いても、直ぐにその村を訪れるような事をしてはよくない。  二、三ヶ月待つのが得策だ。その間、別のパーティーが訪れてモンスター退治を請け負うことだろう。彼らに元気な状態の手強いモンスターの相手をさせておこう。その後もいくつか…四、五組程度のパーティーがモンスター退治に挑むことだろう。  だが、どの組もボスを倒すまでに至らなかった時、その時にこそ、その村を訪れるべきだ。きっと、なかなか退かない敵ボスの首に対して懸賞金が大幅に上がっている頃合い且つ、モンスターは他の冒険者たちの攻撃に大分ダメージを与えられていて、満身創痍になっている頃だ。  このタイミングで仕事を引き受ければ、疲弊したモンスターはレベルが高いものでも比較的楽に倒せるし、パーティーは高額な報酬を簡単に手にできる。  しかし、タイミングを見誤り噂を聞いてから半年以上後に行っても、既に親玉は他のレベルの高い冒険者に倒されていることだろう。タイミングが大事なのだ。   一番いけないのは、やはり、被害を受ける村人たちが気の毒だからなどと、急いでその村に行くことだ。そのタイミングではまだ魔物たちが元気で危険だし、懸賞金も低い。  正義の味方のふりをするのは推奨できるが、人助けの精神で行動してはパーティーのメンバーを危険にさらすことになるし、無事敵を倒せても受け取れる金が少なければ、仲間たちを食わせることもままならない。  そのような運営しかできないのでは、リーダー失格。勇者失格である。
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