当世勇者事情

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 冒険者たちの目下の危機にも触れておこう。近年の、勇者をはじめとする冒険者たちの悩み。それは、モンスター数の減少である。  嘗て、モンスターは世界中に数多いた。歴史家の中には人口の百倍以上いたという者もいるぐらいに。それが最近、著しく減ってきている。  理由はいくつか考えられている。まず、人口増加により農地開発が進み、モンスターが住める自然の森や沼地荒地が削られていっていること。それから、宝飾品の材料として高値で取引される角、爪、鱗等美しい部位を持つモンスターの密猟と乱獲。  そして、残念ながら一番の原因とされているのが、冒険者の増加だ。冒険者が経験値を積むのにはモンスターたちをそれなりの個体数、殺す必要がある。また、過去にはモンスターを殺した数を競う大会などが各地で頻繁に行われていた時代もあった。  こうしてモンスターが少なくなったお陰で草食動物が爆発的に増え、農作地では食害の問題も起きている。  こういったことから、今の冒険者たちは以前と比べて、生活も世間の風当たりも大変厳しい。いまや、異常気象で突発的に増殖したモンスターの駆除や、封じていた魔物がうっかり者のミスで解放されてしまったのを退治するといった緊急時の単発仕事しかない。  近年では、仕事欲しさに魔物の封印を解くような輩もいて、これもまた社会問題になっている。
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