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「いや。母さんの兄なんだけど」
「え、でもおじさんが喪主なんだ?」
「うん・・・そっちの親族がもう母さんしかいないんだよ。それで父さんが」
「え、そうなの?じゃあ、おばさんがそっちの家の最後の一人ってこと?」
「うん、まあ・・・そうなんだけど・・・そうなるかな」
たしかに歯切れが悪い。奥歯に物が挟まったような。歯だらけの厚木だ。
とはいえ、親戚が亡くなった話だ。そんなにはきはきする話ではないか。
でも、なんだろう。何か引っかかる。厚木の叔父さんの葬式について、以前にも何か感じたことがあったような・・・なんだっけ。
「そろそろ行こうよ。昼休みも終わるし、男二人で長い時間トイレから帰ってこなかったら変な噂立っちゃうよ」
いったいどんな噂が立つというのか。とはいえ、まあたしかにそろそろ戻らなくては。
何か胸に引っかかったものを抱えながら教室前で別れる際、伊藤は厚木に訊いた。
「今日学校終わり、厚木の家遊びに行っていい?」
くそ。これじゃあ山本みたいじゃないか。
伊藤は悔しく思いながらも、沸き上がる好奇心に打ち勝つことが出来なかった。
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