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「いやあ、さすが伊藤だよな」
厚木との連れションから帰ってきた伊藤に向けて、山本が嬉しそうに言う。
「訪問の約束まで取り付けて、探る気満々だもんな」
なんとなく悔しくて、伊藤はそんな言葉を遮って自分の話に持ち込んだ。
「で、厚木の叔父さんの葬式なんだけど」
「ああ、先月の。叔父さんも同じ町内に住んでたんだよな。家にもお知らせ―――訃報って言うんだっけ?来てたみたいだし」
訃報。そうだ、たしかあの時うちにもFAXが来てたっけ。
「なんかさ、なんかなかったっけ?」
「なんかって?」
「いや、わかんないんだけど、なんか思ったような・・・」
「んんー・・・特に思い出せることはないな。それ、離婚の理由と関係してんの?」
「わかんない。でも・・・なんとなくそんな気がして」
「じゃあ、そうかもな。伊藤の勘は恐ろしく鋭い」
実際、これまでも伊藤が何か気になったことがあると、そこから謎が解決に繋がることが多かった。だからこそ、山本はこの手の話を伊藤に持ちかけるのだった。
「とはいえ、そもそもうちは親が葬式に出ただけで俺は行ってないしな。葬式でのことなんか知らないんだよ」
「いや、それだったら俺だってそうだ。親が行っただけ・・・」
そうなのだ。出ていない葬式について何か思うことがあるだろうか?俺が見たのは、それこそ式場などが記載されたあの訃報のFAXくらいで―――あっ。
「思い出した!」
「え、マジ?なになに?」
「いや、でもこれ・・・やっぱ関係ないかも」
「えー、なんだよそれ。ちなみになんだったの?」
「ああ、それは―――」
バス通学の厚木とは校門前で別れ、自転車通学の伊藤と山本は厚木家に向けて自転車を走らせていた。
向かっている間もいろいろ考えてはみたが、やはり離婚の理由については思いつくことはなかった。
厚木の家に到着すると、二人は自転車を止め玄関の呼び鈴を鳴らす。
ガチャリとドアが開かれると、「いらっしゃい」と言いながら、もうすっかり私服に着替えた厚木が顔を出した。
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