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 冬。  恋の物語が始まる定番の季節。なんでなのかな? やっぱり……クリスマスがあるから?  私には好きな人がいる。今年高校に入学して同じクラスになった人。最初の三か月くらいはお互い特に接点もなく過ごしていたのだけど、なにせ同じクラスなのだ。どこかで必然的に言葉を交わす機会は訪れる。そしてたまたま少し会話をする機会があり、お互い好きなことも嫌いなこともわからないような段階だったのだが、なぜか会話がすごく弾んだのを今でも覚えている。趣味などが共通していたとかではなく、なんというか笑いのツボや会話のリズムがどこか合っていてお互い笑いが絶えないままいつの間に時間が過ぎていたような。そんな感じ。  その一度の会話をきっかけに私は彼と仲良くなった。とは言っても付き合っているわけでもなければプライベートで遊びに行く仲でもない。あくまで校内だけで接しているだけの仲良しな関係。それでなぜ仲良しだなんて言えるのかというと、私と彼はお互い色んな人たちと仲良く接するタイプの人なのだが、それでも周りから「付き合ってるの?」なんて度々聞かれるくらいなのだ。つまり周りから見てもお互い色んな人たちと仲良く接している中でも私たち二人の仲の良さのようなものは目に見えてわかるらしい。  私は彼のことが好きなわけだし、私の方はやっぱりどこか自分で気づかないうちに他の人とは違う特別視した接し方をしてしまっている可能性を考えればそう見えてしまうのはわかる。でも、正直私から見ると彼の方は私への接し方と他の人たちへの接し方は同じに見える。笑顔の向けかたも会話の弾みかたも冗談のノリでさえも。どれだけ見ても同じに。  きっと彼は誰にでも優しいのだ。私の方の接し方が他の人へと違うぶん、私たちが特別仲良く見えるだけのだ。  告白は想いを伝えるだけの自己満足なものではなく、お互いの好きを確認するためのものだとどこかで聞いたことがある。つまり相手が私のことを好きでないのなら、一方的に好きを押しつけてしまうのは迷惑かもしれない。そう思い今までも想いを伝えるどころか遊びのお誘いもできずにいた。そして、きっとこれからも……。
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