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 十一月になった頃。朝、登校して教室に入るとなにやらクラス中がそわそわしていた。「男かな? 女かな?」「かっこいいのかな? かわいいのかな?」などと聞こえてくる。どうやら転校生がこのクラスにやってくるらしい。性別がどちらにしろ新しい友達が増えるのは嬉しい。私はそう思っていた。  チャイムが鳴り、担任の先生が黒板側の扉から入ってくる。皆は転校生に興味津々なようで、黒板の真ん中あたりまで行き歩きを止めた先生の方ではなく扉の方ばかり見ている。  担任の先生は、生徒の方をゆっくり見回すと口を開いた。 「えー、皆どこから情報を仕入れたのか転校生が気になるようなので、さっそく紹介しようと思う」  ワー、キャーとクラス中から期待の歓声があがる。 「入っていいぞー」  先生の合図を聞くと、ガラガラと扉が開き転校生が入ってきた。女の子だ。黒髪で少し長め、羨ましくも誰から見ても可愛く見えるような見た目をしていた。男たちがものすごく喜んでいるのが見るからに伝わってくる。私ももちろん仲良くなりたいと思った。  転校生の女の子は、先生の隣まで歩くとこちら側を向いた。 「木暮すみれと言います。転校してきたばかりで緊張していますが、よければ仲良くしてください。よろしくお願いします」  クラス中から歓声と拍手があがった。 「じゃあ木暮さんは、そこの北村の隣の席が空いてるから。そこに座って」 「はい。わかりました」  ……うっ。私はなぜか少し心が痛んだ。北村明人。私の好きな人。その隣の席に転校生の木暮すみれさんが座った。
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