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「なんでわざわざそれを私に?」
「だって天音ちゃん。北村くんのこと好きなんでしょ?」
「それは……そうだけど……」
「天音ちゃん!」
突然木暮さんが勢いよく声をあげるものだから私は驚いた。
「なんで想いを伝えないの?」
「だって……相手が自分ことを好きなわけもないのに、想いを一方的に押しつけるのって……迷惑かなって」
「天音ちゃんのバカ!」
「木暮ちゃん!?」
「なにその考え方! 想いを一方的に押し付ける? 告白は好きを伝えるだけでしょ! なにも押しつけてないじゃない!」
「あっ……えっ、どうしたの突然?」
「それに、相手が自分のことを好きなわけでもないって何? 北村くんは誰がどう見たって天音ちゃんのこと好きでしょ!」
「ええ!?」
「本当にもう……あのね、天音ちゃん。私、北村くんのことが好きなの」
「……うん」
「好きな人のことってね……よく見えるようになるの」
「……ん、うん」
「特にね。自分の好きな人が別の人のことが好きだとね、それがよくわかるの。私じゃ絶対に天音ちゃんには敵わないってね……わかるの」
私は頭がついていかなくて言葉がうまく返せない。
「でも、でもね! 私は正々堂々としたい。もしかしたら私が北村くんに思いを伝えたら受け入れてくれるかもしれない。でも北村くんを本当の笑顔にできるのは、きっと天音ちゃんだから……」
二人の間に沈黙が訪れる。
「もたもたしてると私がもらっちゃうからね」
「あっ……」
「明日北村くんを誘うから。私は天音ちゃんのこと友達だと思ってる。もし、天音ちゃんも私のことを友達だと思ってくれてるのなら、私の正々堂々に付き合ってほしい。もし天音ちゃんが北村くんのことを本当に好きなのなら、私の前に北村くんを誘ってよ……そしたら私、素直に諦めれるから」
話しているうちに私たちは木暮ちゃんの家の前まで来ていた。
「北村くんも、私のお誘いを断った後に天音ちゃんのお誘いを受けようとするのはきっとなんとなくばつが悪いでしょ! じゃあまた明日ね!」
そう言って木暮ちゃんは家に入って行った。私の方が少し家が遠いため一人で歩きながら色々考えていた。
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