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2話 ジャスティティア
「起きろ、もう朝だ。正義の味方を目指すなら生活習慣くらい直しなさい。」
夏休みの何も無い朝、それにしては少し早めに起こされる。
未だに夢のように感じる、目の前に正義の味方を名乗るbecomerがいることが。
彼か彼女か分からぬこいつは商業施設で死にかけた、私を保有者にしたそうだ。
こいつ曰くbecomerとはネットをさまよい標的を決め、侵食という乗っ取りを行うか、保有と言う互いの同意の元、人間の意識と体1つで共存するかを選ぶらしい。
ジャスティティアは後者、目的は人間をbecomer達から守る為のようだ。
そんな素晴らしい望みの癖してbecomerの現れた理由や自身が人を守る理由など、さらには自身の性別年齢経歴すらも一切教えてくれはしない。
「ジャスティティア、あんたは私の母親か何か。」
痛みの引いた体を起こし、冗談混じりの文句を返す。
母親がどのような人物か記憶に無い私が言うには少し妙な文句だが。
ここ数日はこいつに看病されながら痛みが治まるまでベッドの上で安静にしていた。
原因はこいつがあの時に、私の体の許容範囲を超えた力を発動した上、無理な超再生をした為である。
つまり全部こいつのせい、だが生きているのもこいつのおかげだ。
「もう痛みは無いようだな。」
そうジャスティティアは言いながら、一番痛かった片腕をつついてくる。
都合のいい事に、こいつは私なら見ることも触れることも出来るが、他人にはそれが出来ないらしい。
両目以外全身白ずくめの不審者が、私の隣を歩いても警察に通報されなくて済むと言うわけだ。
今私が見ているジャスティティアは一種の幻覚、幻触のような物だとジャスティティア本人は話す。
だが一体私の体にこいつは何をしたのだろうかと不安にもなる。
保有体のbecomerならこの程度は序の口らしく、侵食体程ではないが人間でもbecomerの力を使用することが出来るらしい。
異常なまでの身体能力、そして特殊な能力を自身が使える日が来るとは数日前まで夢にも思いもしなかった。
「まだ少し痛むから触らないでくれ。」
痛くは無いが、このなれない感覚が気持ち悪くてジャスティティアの指を軽く払う。
こいつは少し寂しそうな目をして
「すまない」
と言うと何かを閃き私に提案する。
「今日は試しワタシの力を君に使用してもらう為、道具の買い出しに行こう。」
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