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1話 正義の味方
何になりたかったか。
正義の味方になりたかった。
正しき者の為に悪を挫き、誰も見捨てずに手を差し伸べる。そんな存在になりたかった。
何故なりたかったのか。
分からない、忘れてしまったんだ。
なりたかった存在になることを諦めると同時に理由も自身から剥がれ落ちてしまったんだろう。
でも正義の味方になろうと決意した日のことだけは今でも少しだけ思い出せる。
あの日は今から10年前、今では「becomer遊園地襲撃事件」と呼ばれている事件が発生した日だ。
そう、私もその事件の被害者となった。
人間の力を遥かに凌駕し、特殊な能力を使う正体不明の者達「becomer」
彼らが人類に初めて姿を表し、猛威を奮ったのだ。
ある者は攫われ、ある者は攫われる人々を助けようとし殺害された。
私の両親は後者、私を庇い殺められたのだ。
その光景はまるでテレビのヒーローショー、怪人達が暴れている光景その物。
まだテレビと現実の区別がつかない幼かった私には、そのようにしか見えなかった。
自身を庇い動かなくなった両親を目の前にして、ただひたすらに泣き叫び続けた。
そして、助けを呼んだ、「助けて、正義の味方」と。
そんなもの現実には存在しない。
今思えば意味の無い嘆きだ。そう、存在しなかったはずだった。だがその時だけは、私の目の前に現れた。
「正義の味方」が
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