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うまくできるだろうか。
私はリョウちゃん以外の男と食事さえしたことなかった。他の男とろくに会話をしたこともない。
男の気を惹きつける会話なんてできるのだろうか。
そんなことを考えて、必死に話題を用意していったら、取り越し苦労だった。
ひたすらアキラはハイテンションで語り続けていて、私はパンケーキを食べるのと相槌を打つだけで精一杯だった。
最初の密会はなんだかわけがわからないうちに終わってしまった。
失敗したな、これでもう終わりかな、なんて思っていたら意外に二回目の誘いが来た。
今度は落ち着いて私は密会に臨んだ。
待ち合わせて二人で街をブラブラした。
自分より身長の高い男と行動を共にするということがなかったためか。
胸を張って歩けるという感覚に。
少し顔を上げないと目が合わないという、かつてない体験に。
なんだか恐怖に似た嫌な汗をかく威圧感を感じた。
それでも私はアキラの話に一生懸命共感する振りをしたし、大袈裟に反応もしてやった。
三回目。
アキラが手を握ってきた。
予想もしていないことだったので、私は頭が真っ白になってしまい、身が竦んでしまった。
硬直している私に、アキラが顔を近づけてキスをした。――
帰宅して、自己嫌悪した。
どうしてだろう。動けなかった。
凍りついたように身体が動かなかった。
これでは、アキラの思うツボではないか。
私が。
アキラに期待をもたせて。
私が。
アキラを手の上で転がしまくった後、振ってやるつもりだったのに。
転がされているのは私ではないか。ルパンを翻弄する不二子ちゃんのような女に、私はどうしてもなれそうにない。無理だ。
引き返そうか。
このままじゃ、アキラにいいように遊ばれて終わりだ。ヤリ捨てされる女の子と同じ。
向こうの勝ちになってしまう。
迷って考えたけど、折角ここまで来たチャンスを不意にするのも勿体無いと思った。
なんとかして、もう少し頑張ってみようか。
それから何回か密会を重ねたのち。
アキラのアパートで会った時だった。
パニックもののDVDを二人で観ていたら。
アキラが予兆もなく、後ろから身体を抱き締めてきた。
私は恐怖で身体が動かなかった。――
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