リョウ

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 アキラは上手だったのだろうと思う。  とても良かった。  初めて私が上になった時、経験がないことを白状すると、驚いて笑って。  教えてくれた。  私が知らないことを次々に優しく教えてくれた。  リョウちゃんとも変わらずに会っていたけど、私はアキラとの行為と比べるようになっていた。  リョウちゃんとのセックスは癒しだった。  アキラとの行為は快楽の追求だった。  私は当初の目的がなんだったか分からなくなり始めた。  何かに取り憑かれたようにアキラとの身体の関係に耽っている私は一体なんなのだろう。  アキラはもう私以外の女とは寝ていなかった。  私しか抱いていなかった。  抱き方を見るに、私に溺れているように見えた。  アキラを傷つけるなら今がその時期なのだろう。  それでも私はそんな気が起きなかった。  ******  あるとき、抱き合った後、アキラが私を見つめてきたことがあった。  その頃になると、私は随分とアキラを下に見るようになっていた。アキラは私に決して逆らわないことがわかったからだ。  意地の悪い感情がふとこみ上げ、聞いてみた。 『もっと小さくて可愛い子としたくならないの』  アキラは首を振った。 『ヒロコが、いいから』  私の手をつないで握りしめて、アキラは私を見て微笑んだ。 『昔の俺も知っているのはヒロコだけだから』  アキラの手の温かさを感じて、私は不思議な気持ちになった。そのとき、私は初めてアキラを憎い相手、または快楽の相手以外の男として見た。  もしかして、アキラは私に一番近い人間なのかもしれない。  小学生のあの頃、私たちは同じコンプレックスを持って生きていた。  男のくせにチビのアキラと。  女のくせにデカい私。  私たちはお互いの気持ちが分かりすぎるほど分かる特別な関係なのかもしれない。リョウちゃんでは埋められない隙間をアキラとなら埋められるのかもしれない。  分からなくなっていた。  アキラと過ごす私と、リョウちゃんと過ごす私。  どっちが嘘でどっちが真実なのか。  どっちが本当の私なのか。  私は二つの自分で日々を生きていた。
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