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リョウちゃんにばれた。
私の友達がリョウちゃんに告白したらしい。
その子は以前アキラと付き合っていた子だった。
私はリョウちゃんの前の『ヒロコ』で対応するつもりだった。
もう潮時だ。
元通りのヒロコに戻ろう。
リョウちゃんだけしか知らずに。
優しいリョウちゃんと穏やかに過ごすことに満足していたヒロコに。
でも、怒りにまかせて私を非難するリョウちゃんの前に現れたのはもう一つのヒロコだった。
『アキラくんに告白されたの。昔から……小学生の時から私のことが好きだったって。ちょっとでいいから、僕と会ってくれないかって』
リョウちゃんを傷つけるだけなのに。
何故私はこんなことを言うのだろう。
『男の子って、好きな子をいじめたくなるんだって。だから、私に嫌なことを言ったんだって』
どっちが本当の私なの。
これが本当の私なの。
『そんなわけない。あいつはお前がいない時に僕たちの前で、お前のことを死ねばいいのに、て言ってたんだぞ』
そのとき私に返したリョウちゃんの言葉に、私はひどく傷ついた。
『嘘』
私は泣いていた。
『嘘。リョウちゃん、どうしてそんなに酷いこというの?』
私は泣いていた。
馬鹿な女の子みたいに。
アキラに捨てられて女子トイレで泣いていた、あの女の子のように。
信じられなかった。
アキラはあの頃そこまで私を憎んでいたのか。
思わず顔を覆う私を置いて、リョウちゃんは部屋を飛び出した。
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