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俺が埋めた人形は、両手に収まる大きさの小さな布製のものだった。
毛糸の髪をみつあみにしたピンクのワンピースの女の子【わたしちゃん】。
彼女の姿はそこにはなかった。
「こんなものだけだっけ……? まあ、懐かしいっちゃ、懐かしいけど……期待が大きすぎたって言うかさぁ。もっと、すっげぇ感動するかと思ったけど、そうでもなかったな」
箱をのぞき込んだ東条が、自分のカードゲームを中に戻す。
少しつまらなそうな東条の声に耳を傾けることなく、目をさらにして缶の中を見やる。
「――まさか、掘り返されたとか?」
確かに入れたはずだ。
散らばったカードの下から手紙を取り出してもう一度箱の中を漁るが、やはりわたしちゃんはいなかった。
「なにか探してる? 修二、箱になにを入れてたの?」
俺の異変に気付いたらしく、木村が俺の顔をのぞき込んでくる。
「別に、なにも……」
内心動揺しているのを悟られないように、平静を装い答える。
「うそだ。明らかになにか探してたじゃない。それに、みんな一つずつなにか入れておこうって言ったじゃない」
「そうだったな。修二はなに入れたんだっけ?」
どうやら彼らは俺の宝物について覚えていないらしい。
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