タイムカプセル

10/47
前へ
/87ページ
次へ
俺が埋めた人形は、両手に収まる大きさの小さな布製のものだった。 毛糸の髪をみつあみにしたピンクのワンピースの女の子【わたしちゃん】。 彼女の姿はそこにはなかった。 「こんなものだけだっけ……? まあ、懐かしいっちゃ、懐かしいけど……期待が大きすぎたって言うかさぁ。もっと、すっげぇ感動するかと思ったけど、そうでもなかったな」 箱をのぞき込んだ東条が、自分のカードゲームを中に戻す。 少しつまらなそうな東条の声に耳を傾けることなく、目をさらにして缶の中を見やる。 「――まさか、掘り返されたとか?」   確かに入れたはずだ。   散らばったカードの下から手紙を取り出してもう一度箱の中を漁るが、やはりわたしちゃんはいなかった。 「なにか探してる? 修二、箱になにを入れてたの?」   俺の異変に気付いたらしく、木村が俺の顔をのぞき込んでくる。 「別に、なにも……」   内心動揺しているのを悟られないように、平静を装い答える。 「うそだ。明らかになにか探してたじゃない。それに、みんな一つずつなにか入れておこうって言ったじゃない」 「そうだったな。修二はなに入れたんだっけ?」   どうやら彼らは俺の宝物について覚えていないらしい。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加