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「ねえ、本当にこのあたりだったっけ?」
壁際から聞こえてきた声に、シャベルを動かす手を止める。
首にかけたタオルで額に滲んだ汗を拭いながら、木陰で諦め顔の木村陽子を横目に見る。
うんざりした顔をしてスポーツドリンクを飲み、彼女は隣にいた佐々木由香にそれを渡した。
久しぶりに会ったのだから積もる話もあるのだろう。
彼女たちはすでにタイムカプセルのことなどどうでもよさそうだ。
昔はよく遊んでいた彼女たちと数年ぶりに顔を会わせたが、二人ともすっかり大人になっていた。
ミニスカートを履いてドッジボールをしていた木村陽子は長い髪を巻いて、日傘なんて差している。
佐々木由香も白いワンピースから伸びる四肢は、子供にはない女性特有の柔らかさがあった。
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