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うすうす気づいていたが、やはり両親とはあまり良好な関係ではないらしい。
そういえば、彼女の親を子供時代に見た覚えがない。
共働きであまり桐山に構ってやれなかったのかもしれない。
そこまで考え、ふと思い出す。
「おれさ、たぶんお前の親にはベルトを渡してない」
あの日、ベルトを持って向かった彼女の家を訪ねた。
その時の記憶をたどると、ベルトを受け取った顔は彼女の母親にしては老けた顔をしていた気がする。
たしか、古風な着物を着た上品な初老の女性だったはずだ。
「俺が渡したのはお前のおばあさんじゃないかな? 桐山のお母さんが」
「ばあちゃんに?」
呟いたかと思うと、桐山はなにかに気付いたのか目を見開き、俺の胸ぐらに手をかけた。
「アンタ、ベルトをどこに届けた?」
「だから、お前の家だよ」
「そうじゃなくて、どの家に届けたのか聞いてんだっての」
ぐっと近づいた彼女の顔に、俺はとっさに窓の外を指さした。
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