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「カンパ~イ!」
「乾杯!」
今日は僕たち夫婦の銀婚式。いつもより、ちょっと高いワインを開けた。
「近頃は、『銀婚式やないか~い!』、とかってツッコんで」
「『ルネッサ~ンス!』って乾杯だよ♪」
二人の娘たち夫婦も来てくれた。
みんなでワイワイ、ワインと食事を楽しんでいると、妻が、「実はね~……」と、切り出した。
「この前ね、あなたも知ってる、ほらっ、私が仕舞ってた交換日記」
「あ~、君が高校時代に付き合ってた彼との交換日記?」
「へ~、ママそんなの持ってたんだ」
長女がニヤリとツッコんだ。
「そうなのよ。でもね、もう銀婚式だし、パパに悪いから、捨てちゃった!」
「えーッ! そうなのーッ! ちょっと読みたかったな~!」
次女も興味津々だった。
それは、以前、家をリフォームする際、断捨離をしていたら、古いダンボール箱の中から出てきた。
「こんなの持って来ててゴメンね! 捨てるわ!」と、言っていたが、「君の大切な思い出なんだから、置いときなよ!」と、妻へ、懐の大きい・気にしてないよアピールも含めて、思い止まらせた経緯があった。
実際、僕は気になるタイプではなかった。
「俺全然気にしてないのに~。そんな大切なもの捨てちゃっていいの?」
「いいのいいの。きっと、そう言ってくれるだろうと思ってね、あなたが気を遣わないように、あなたの大事なものも、一緒に捨てておいたから」
「えっ?」
何だ……?
「ほらっ、あなたの仕事関係の棚に、うま~いこと隠してあったチェキの束!」
「え、ぇっっっ?!」
「ポラロイドの束! ナンシーちゃんとのね? フフフ……」
「パパ、サイテ~!」
「サイテ~~~……」
長女に続いて、次女からも冷た~~~い、冷えっ冷えの視線を浴びた。
「いやぁ~、接待でさ、よくお邪魔するお店なんだよ、アハハ……」
ー ♪キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン……♪ ー
ちょうど地元の小学校のベルが鳴った。
「ま、あなた、人生いろいろってね!」
「そだね~! アハ……」
「次は、金婚式ね! ナ~ンシ~!」
「汝でいいです、アハハ……」
ー ♪金~婚~冠~婚~……♪ ー
交換日記を捨てる、暗黙の交換条件!
妻と娘たちの生温かい笑顔が、僕のこれからの健全なる私生活を物語っていた!
娘婿くんたち、バレるなよ、あ~バレるなよ、バレるなよ♪
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