タイムカプセル

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タイムカプセル

 ある日の午後。昼下がり。 太陽の光を浴びて真っ赤に咲き乱れる花畑で、私は人を待っている。  赤い花がどこまでも広がる花畑。その中心地にポツンとある、赤い屋根の小さな家。その玄関から徒歩四歩。 そこには、『我が星の最新鋭のタイムカプセル』という大層な名前の、大きく頑丈な物体が、夏の強い日差しを反射させながら口を開けている。  私は玄関を背にして、その真っ黒なカプセルの前にしゃがみ込んでいる。熱中症対策に、お気に入りの帽子を装備。 「何かを待つ時間はとても暇よね。お花さん」  なんだか手持ち無沙汰で、足元で風に揺れる花へ声をかける。 「でもね、まだまだ待つことになりそうっていう予感がするの。だからその間、製作者である私が直々に、このタイムカプセルの説明をしてあげるわ」  例えば、焼きたてのパンを入れたとしましょう。 カプセルの蓋の裏側に付いているダイヤルで、二十年後に設定して蓋をする。 一度閉じてしまうと設定した月日が経たないと開けられないのだけれど、見た目よりもずっと頑丈にできているから、長い年数を設定してもその間に壊れる心配はないわ。  待つこと二十年。  蓋は自動で開く。カプセルの中を見ると、焼きたての柔らかいパンが入っているの。 つまり、蓋を閉じた瞬間から、カプセル中のあらゆるものの時が止まる。そして、蓋が開いたその時に再び時が流れ出すの。 まるで魔法みたいでしょ?  もしかして、タイムカプセルではなくて、タイムストップカプセルという名前にした方が分かりやすかったのかしら。 でも、まあ、とにかく! すごいでしょ? 私が作ったのよ。  静かに私の話しを聞いてくれる花に向かって、ふふんと胸を張ってみる。
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