プロローグ

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 アレはおまわりさんが別れ際に渡してくれた物だ。  水色で楕円形、金具と長いヒモが付いている。 「防犯ブザー?」 「ゲシシシ!」  落とした防犯ブザーに気を取られてる間に、 次の踏みつけが襲いかかってくる。  僕はもう一度後ろに飛びのいた。  先の尖った大きな靴がすぐ前の草を踏み潰す。  こちらが子供になったのを勘定しても、このピエロは明らかな巨人だ。 「アレを取り戻さなきゃ……」  おまわりさんが確かに言ってた。 『困った時にはこれを使って』って。  今、僕はどう考えても困っている。  右も左も分からないうちに広い草むらに放り出された。  しかも巨人ピエロが踏みつぶそうとしてくる。  これを困っていると言わずに何と言ったらいいのか。 「ゲシシィッ!」  巨人ピエロが右手を振りかぶる。  尖った棒が僕目掛けて投げつけられた。 「わあっ!」  僕は棒をかわそうとした。  だけどかわしきれなかった。  尖った棒は僕の服の右脇腹辺りを貫通して地面に突き刺さる。  ケガはせずに済んだけど、これじゃあ身動きが取れない。 「くそ!」  今の僕の手首より太い棒だ。  僕は棒を引っこ抜こうと両手で引っ張った。 「ビクともしない!」 「ゲシシシシ……」  巨人ピエロがにじり寄って来る。  服を破こうにも、この(いつの間にか着てた)服は妙に丈夫だ。  全然ちぎれてくれない。  元の体元の筋力だったら、もしかしたらちぎれたかも。  でも今の体じゃ絶対無理だろう。  当然、落とした防犯ブザーに手が届くはずもない。  なんて事だ。  転生して早々、完全に追い込まれてしまった。
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