プロローグ

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 すぐそばで女の子が跪いた。  サラサラでツヤツヤの赤いロングヘアーが顔に当たってくすぐったい。  ちょっと丸っこくて整った顔の、クリクリした大きな目が覗き込んでくる。  高校生くらいかな。  とても心配そうな表情だ。  花みたいな模様を散りばめた白いワンピースを着ている。  胸元が大きめに開いていて、しかも姿勢を低くしているものだから、 思いっ切り見えてしまっている。  僕は意識して、見ないように努めた。 「ヴァン?」  ……この子、可愛い。  それにすごく優しそう。  転生した今となってはどうでもいい事だけど、 こんなお姉さんが居れば良かったのになあ。 「ヴァン!」 「あ、大丈夫です」 「良かった。  すぐに助けてあげるからね!」  女の子は僕の服を刺している棒を両手で握る。 「ふんぬっ!」とりきんで棒を引き抜いた。 飛び散った土が僕の顔にかかる。  これで僕は自由になった。 「さ、早く逃げて!」 「はい!」  女の子に促されるまま、僕は走って逃げた。 「きゃあ!」 「えっ!?」  女の子の悲鳴だ。  振り向くと、巨人ピエロがヒモを使って女の子を締め付けている。  ヒモは首にもかかっていて、女の子はとても苦しそうだ。  倒れはしたけど、大したダメージじゃなかったんだ。 「来ちゃダメ! 逃げるのよ!」 「でも!」 「私なら、大丈夫だから……」 「ゲシシシシ! ゲシシシシ!」  僕は迷った。  そして走り出した。  勿論、前にだ。
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