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ドッペルゲンガー
もう八月も末だというのに、奇妙に暑い日だった。
空はちょうどそこらを駆けていた子供の笑顔のようで、アスファルトの道路は視界をゆらゆら揺らす。人々は日傘や木陰に頼りながら、あるいはできる限りの布面積を減らして汗を流していた。
だから彼女の存在は余計に目を引いた。
真っ黒なローブを羽織り、日差しの真ん中に棒立ちになっていた少女。不思議な子だなと見ていると、ふと彼女は思い出したように後ろを向き、目が合った私ににこりと微笑んできた。
その顔は驚いたことに私そっくりで、まるで世界から私たちだけが切り取られたみたいに、誰も彼女が見えていないようだった。
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