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ホークアイ(鷹の目)
もうすぐ夜が明ける。
木の葉の向こうに、つり橋が見えた。
「さ、行こう」
シブを先頭に真ん中にアメリア、ジェシーを殿にして
シブが一歩橋に踏み出した時-
背後から花火のような音がしてシブの金色の髪がちぎれ飛んだ。
「来た!」
シブが振り向く。
ジェシーは既にレミントンを構えていた。
あ、という声がして木から人影が落ちる。
「ホークアイの技を見せてやるぜ。行け、兄弟。」
ジェシーは二人の方に振り向きもせず
後ずさりしながらも銃を構える。
肩がわずかに動くと、
人が次々に木の上から落ち、
叢に潜んでいた者はのけぞり倒れた。
皆きれいに額に一発。
「早く行け!次々来るぞ!」
ジェシーは叫ぶ。
「アメリア、行け、俺は残る」
シブは銃を構えた。アメリアは走り出す。
「駄目だお前もだ!アメリア一人では危険だ。
早く行け!俺も行くから。大丈夫だ!」
そういう間も森から弾が飛んでくる。
流れ弾がつり橋の縄をぶち抜いた。
ぐら、と傾く。
「早く行け!命を守らなきゃ!兄弟、行ってくれ。」
命、と聞いてシブは走り出す。
そうだ、命だ、ジェシーが嬉しそうに言った
「命を守る仕事」
やり遂げなきゃ、兄弟の為に、やり遂げなきゃ。
既にアメリアはつり橋を渡りきっていた。
へたり込んではあはあと荒い息遣いをしながら
シブを待っていた。
「あ、ジェシーさん!」
アメリアがつり橋の方を指さす。
シブが振り向くと、なんとジェシーは銃を撃ちながら橋を戻っている。
「兄弟、ジェシー、何やってんだ!ばか、おい、戻れ!」
吊り橋を渡り終えるとジェシーは向き直り、
今度は橋の向こうの二人に銃口を向けた。
「兄弟!何しやがる」
銃声が二つ。
バラバラと音を立てて、
吊り橋がゆっくりと谷底へ落ちていった。
「シブ!俺のたったひとりの、真実の兄弟。あばよーっ」
笑顔でレミントンを持ち上げて振るジェシーの脚とわき腹のあたりには
既に赤いしみが広がっていた。
今度はシブが叫ぶ。
「国一番の鹿撃ちにして俺の誇りである兄弟ジェシー、またなーっ。
お前の仕事を引き継いだぜ」
ちぎれる程手を振った後、
シブは座り込んで泣いているアメリアを立たせ
歩き始めた。
弾が数発飛んできたが逸れた。
少しして、銃声が止んだ。
静まり返った谷には太陽が昇っていた。
素晴らしい、爽やかな朝。
二人は振り返らず歩き続けた。
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