TO-M＆ジュリー 青ざめる機械

第一話 ユートピアにて

　そして、最近アンドロイドの間で流行しているという帽子の、ボーラーハットを被り、そそくさと帰り支度をはじめた。

　近年、アンドロイド達に人間の真似を始める現象が確認されている。人間の学者やAIでさえも、『不可解な現象である』それ以上の見解は出せないでいた。『人間の行動様式を蓄積したアンドロイドは人間に近付こうとし始める。』そんな仮説を立てる専門家も居るが、未だ証明はされていない。　

　そして、帰り支度をしていたアンドロイドが、椅子に深く腰掛け不満げに俯いている男に向け唐突に話しかけた。「本当のところ私語は禁止されているのですが、実を言うと私は人間が羨ましいんですよ。だって人間には『権利』がある。人間に生まれさえすれば、天寿を全う出来る権利が与えられるのですからね」と言った。

　そう話し掛けたアンドロイドは突然動きを止め、人間のように口に手を当てる仕草をした。