第二章 ジュリエッタ・マウス

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 それは暑い夏の日の出来事であった。二十一世紀に入ると、世界の気象変動は熾烈を極めはじめ、毎年の様に気象観測史上最高の熱波と寒波を記録し続けていた。そんな暑苦しいの夏の空気の中で、信じられない事件が起こった。アンドロイドが人間を殺害したというのだ。    時は二千百十八年。人間と機械の住み分けが進み、労働|全般は機械が、文化芸術全般を人間が担当し、福祉関係を共同で担う。そんな理想社会で、警察官は社会福祉に組み込まれ、人間と機械二人一組で携わることを義務付けられていた。  労働と文化芸術そして社会福祉、その全てに携わる数少ない人間、それがこの物語の主人公、刑事ジュリエッタ・マウスである。    現在、警察組織の知的機関である刑事課は、免許取得者による登録制となっている。警察大学を卒業し、国家試験を経て、専門分野の実務経験を積み、晴れて刑事の資格を得る。昔でいえば、専門職のエリートであろう。
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