第二章 ジュリエッタ・マウス

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 その日もジュリエッタは、公共機関職員専用宿舎のマンションで、日課の筋力トレーニングを消化し、シャワーを浴びたのちに、仕事専用のコンピューターを立ち上げた。そして、まだ濡れている髪にタオルを巻きながらメールボックスに目を通す。現在、これが警察官の日常的な勤務となっている。警察署に詰める外勤と違い、事件が起きなければ仕事の無い刑事職の免許所有者は、通常自宅で地味な書類整理などをしている。    この日も、ジュリエッタに警視庁からメールが届いていた。近年、一般犯罪の減少で警察組織は再編成され、警察庁も首都圏を管轄する警視庁へと統合されている。    そして今日も、ジュリエッタは自宅に届けられた資料を元に犯罪の捜査を進める。特に彼女は、大学で犯罪心理学を学び、研究生として現場で二年の実務経験を積んだ、所謂(いいわゆる)エリートであるから、毎日が自宅での事件資料の整理と分析が主な職務内容となっていた。その為、警視庁や地方警察のオフィスに出掛ける時は、現場検証が必要な、余程の難事件くらいに限られている。
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