第一話 ユートピアにて

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 第一、真面目に相談したところで仕事があるならあると、機械はそれを提示するに過ぎないではないか。相手は人間でない、真面目に相談する必要などありはしないのだ。そこで彼は、少し意地悪な相談をしてみる事にした。仕事が見付からない焦りと、生きる張り合いを失った虚しい人生のうさばらしを、このアンドロイド野郎に手伝ってもらおうという寸法だ。少しくらい構わないだろう。機械に仕事を奪われた人間様のお役に立つのだから、こいつもロボット冥利に尽きるというものだ。 「どうされました?」  黙っている男に、鈍いシルバーの顔色をしたアンドロイドが無表情な声をかけた。
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