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板書
いじめで不登校になっていたクラスメイトが自殺した。それが数日前。
クラス中ざわついたけれど、そいつが学校に来なくなったのはもう三ヶ月ばかり前で、可哀そうだとは思ったが、悲しいとまでは思わなかった。
多分、クラスの全員が全員、俺と似たような気持だったと思う。
そして今日、登校したクラスは、最後の一人が教室内に現れるなり異常な空間に変貌した。
一瞬にしてカーテンが総て閉まり、扉も窓も一切開けることができなくなった。
その状態で、黒板に文字が浮かび上がる。
『先日死んだ〇×です。今から黒板に、生前僕が受けていたいじめの内容を記します。全員内容をノートに書き留め、最後に、どうすればこのようないじめを食い止めることができるのか、自身の意見を書き込んで下さい』
「ふざけんな! 何で俺らがそんなめんどくせーことしなきゃならねーんだよ!」
文字を見るなり一人の生徒が立ち上がった。いじめ主犯の男子生徒だ。
「あいつの幽霊がここにいるのか? だったら姿を現せよ! すぐ家に帰りたくなるようにしてやるから!」
男子生徒が声高に叫ぶが反応は一切ない。ただ、少し遅れて黒板の文字が消え、新たな文字が浮かび上がった。
『なお、黒板の文字は一定時間が経過すると消滅します。書き写すことができなかった人も消滅します』
その一方的な文章に、今度はいじめに加担していた生徒達全員が騒ぎ出したが、死んだクラスメイトが現れることはなく、再び黒板の文字は消えた。
みなざわついているが、こんな状況に陥っている以上、さっきの文章が単なる脅しだとは思えない。
いじめをしていた連中以外、クラス全員がノートを取り出し、いつでも黒板の文字を書き写せる態勢を取る。
「てめーら、何あんな奴の言うことなんか聞いてやがるんだ! やめろやめろ!」
主犯の恫喝が室内に響くが、誰も耳を貸す様子はない。その対応に苛つき、主犯が手近な生徒に掴みかかろうとした瞬間、不自然な状態でその動きは止まった。
見えない誰かに引っ張られるように、いじめ主犯は自分の席に戻された。それと同時に黒板にまた文字が浮かび上がる。
綴られるいじめの内容と、それに対する死んだ生徒の苦痛の声。正直、書き写すだけでも気分はよくなかったが、投げ出したらどうなるのかを考えると、手を止めることはとてもできない。
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