わたしは彼に削られてしまいたい

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「わたし、削られたい」  こころの奥の言葉が流れ出た。 「削られたいの?」  あやすように言われて、わたしは鼻をすすった。 「わたし、甘えてばっかり」 「言葉のあやだよ」 「ちがう」  そういうのとは全然、違う。  学業がうまくいかないとか、友だちが少ないからとか、そういうのは関係なくて、わたしは泣きたいほど削られたいから削られるのだ。  すべてが恐ろしく、VRに見える世界との、唯一の心地よい接点。  丸みをおびた、鋭い感触。 「夏帆の言葉のあや」 「緩和しないで」  わたしのわがままを知りつくしているくせに、彼は言葉のあやのせいにしようとした。
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