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「院長が読書好きとは思いませんでした」 「元々図書館に入り浸っていた時期がある位だ。それに別に本を読んでやる事自体嫌いなわけではない。むしろ……慣れている」 「確かに、読んであげている所はどこか……サマになっていた気がします。以前どこかでそういう仕事でもされていたんですか?」 「仕事じゃない。昔」 「院長せんせー。ラプレー」  二人に子供が駆け寄ってくる。  他の子供達よりも体格が大きく、ここでは年長として皆の面倒も受け持っている少年だった。 「どうかしましたか?」  ラプレが先んじ、子供の前で屈み視線を合わせる。 「あいつ見てない? かくれんぼしてた時から姿が見えなくなってさ。てっきりこっちに隠れてるんじゃないかと思ったんだけど」 「……見たかラプレ」 「いえ何も。周囲を監視しているビットにも、彼の反応はありません」  魔女お抱えの機族であるラプレは、孤児院の周囲の監視も受け持っている。ビットと呼ばれる小型の哨戒機械を撒き、子供への危険がないか監視しているのだ。  何分、院長は敵の少なくない経歴を作ってきた。  ここが誰かに狙われる可能性はゼロでは無い。 「もう一度周囲を探知しろ。反応が無いなら、俺が行く」 「了解しました」  ビットには反応はなく、院長が出ていく事となった。 「ラプレの探知にかからないとはどういう事だ」  子供の捜索が始まった。  まず、ラプレの探知の方法を変えた。  孤児院で使っている靴はその殆どが似通っている物だ。なので、ラプレは失踪した子供の靴の形を解析し、その足跡を元に進んでいった方向を調査する。  辺りは魔女の結界のおかげで危険な魔物は少ない。とはいえ、全くもって安全とは言い難いのだ。子供にとって外はどこに行っても危険である。  孤児院は森で囲まれている。そのため、魔物以外の猛獣なども潜んでいる。噛まれれば無事では済まないのだ。 「理由を聞いて場合によっては軽く説教しなければ……お、いたか」  ラプレのデータは正確で、後を追うにはそれほど苦労しなかった。  所詮は子供の足取りである。それほど遠くに行ける訳では無かったようだ。  しかし、どこか子供の様子がおかしい。
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