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「……平気か? おい!」
子供はぐったりしていた。
血の気が引き、体から嫌な汗が吹き出てくる。
落ち着いて拍を計り、体に怪我がないか調べる。
「……無事か」
幸い気を失っているだけのようだ。まずは一安心といった所。
「しかし、こんな所があったとはな」
子供が倒れた目の前の岩山には、大きな穴が空いていた。洞窟と言って差し支えないほど、巨大な大穴である。
「気にはなるが……今は後回しだな」
子供を背負って進むわけにはいかない。信号灯をあげ、ラプレに連絡をする。大穴のある場所を記録してもらい、後日探索する事となる。
「お前の探知に引っかからない洞窟なんてあったんだな」
「孤児院を建てる際、この辺りの地形は粗方調査していたのですが……不思議です」
「機族にも間違いはあるんだろう。そら、見えてきたぞ」
数日後の事。
二人は子供の面倒を魔女に任せ、例の洞窟へと足を運んでいた。
「ここからは魔物も出る。心してかかるぞ」
「了解しました」
洞窟の奥へと進んでいく。
予想通り魔物が根城とし始めており、入った途端からわらわらと群れて出てきた。気を失った子供が無傷だったのは、本当に偶然といっていいほど。
魔物の強さはそれほどではなく、ラプレは勿論、戦いから身を引いて久しい院長も軽く御せる強さのものしかいなかった。
「洞窟という割に、何もありませんね」
「宝があるのが相場だろうが、今となっては俺には必要ないものだ」
「院長の資産レベルなら確かに孤児院運営に心許ない事はないでしょうが……あって損をするものでも無いと述べますが」
「俺の資産など、使う機会のなかった汚れた金だ。こうやってまともな手段で使い、ようやく浄化されている気がする程度のな」
「お金はお金です。面倒ですね院長は」
「どうとでも思え。お、ここが最奥か?」
魔物を倒し、道すがら歩いていくと、最後には壁にぶち当たった。周辺には何もない。土くれの壁。それに覆われた上下。特筆すべき点は何もない。本当にただの洞穴のようだ。
「何もない……か」
少なくとも院長はそう感じた。
「……いえ、僅かに地下から熱源を感じます。距離にして――」
「それくらいなら今の俺でもいけそうか。よし、引っ張り出してやる」
院長は手に力を込める。
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