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「むんっ!」  力強い号砲と共に、振りかざした掌を地面へと打ち付ける。地鳴りが響き、地面に蔓延る土を一帯へと四散させる。まるで爆発が起きたかのようである。 「……っ。加減はした。ここが崩れる事はないだろう」  地鳴りのせいか体を震わせる院長。 「あれは何でしょうか?」  院長の一撃により、地面は掘り下げられた。それに伴い穴の一番深い所から、一本の棒のような物が出てきているのが見て取れた。 「……何だこれは」  院長は棒切れに近寄り、力任せに引っ張り出す。幸い周りの地盤は衝撃により柔らかくなっており、それ程力を込めなくともその姿を拝む事が出来た。 「剣……でしょうか。それにしてはとてもーー」  棒切れは長く、取っ手のような物がついているためそう推察した。  そして何より巨大だった。  まるで伝承にある巨人族が使っていたのではないかと思ってしまう位の寸法。 「大きいですね……」  ラプレは基、院長の背丈をも超えている。とても人間が使っていた物には見えない。  残念ながら、記録が主のラプレの頭脳には近しいデータは無かった。 「………」  対照的にそれを見て息が上がり始めた男が一人。 「この意匠……造形……文様の形もあっている。しかし、この材質が気になる。仮にあの時代が続いていたとして、そう可能性付けるなら……そうか」  いきなり人が変わり変質者のようにつぶやき始めた院長。 「ど、どうされました?」  驚きを隠せずラプレはぎょっとしてしまう。  冷静で物静かな彼女に珍しい出来事である。主人である魔女が目にすれば、驚いていただろう。  そんな変質者ではなく、院長は心当たりがあるようで、物を眺めてはぶつぶつと呟き、その推論を経てこう結論付けた。 「これは大戦期に存在した……虹霓の異名を持っていた覇王の持ち物だろう」 「……ご存じなのですか?」 「弟を連れて行った図書館で関連書物を読んだ事がある。その時代のラクトヘルムで奉られていた虹を掲げて国を立ち上げ、世界に覇を唱えた人間のはずだ」  えらい物を見つけたとばかりに少し興奮気味に語る院長。 「歴史書など根拠の無い言いがかりで書かれた物も多いではないですか。推論だけで語るのは危険だと思います」  あくまで冷静なラプレは冷ややかな声で自分の意見を述べる。
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