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「勿論根拠はそれ以外にもある」  まるで教師のように院長は人差し指を立てる。 「まずはこの地層。かなり積み重なった場所から出てきた。この地層の厚さから逆算するに、相当古い時代の物と推察される。そして、この剣の文様。覇王が好んで使っていたと文献に書いてある物と一致する。それは覇王の末裔の王家で、現在も採用されている物と酷似しているため、結論を出すには申し分のない要素だ」  いきなりずらっと並べる語句に、ラプレは少し舌を巻く。そして。 「……お宝ですね」  こう告げるしかなかった。  僅かな気持ち悪さを覚えつつ、きちんと回答出来た自分を褒めたくなる。  そんな気持ち悪さを知ってか知らずか、院長の男の反応はまた意外な物だった。 「宝ではあるが……言った様に俺達には必要ない。壊せラプレ」 「……正気ですか?」 「……頭を触るな」  思わず、院長が頭を打ったかと思い、ラプレは手でおでこの辺りを摩っていた。  そのような物に疎いラプレの目から見ても、歴史的な価値がある代物なのは確かだった。歴史研究家にでも見せれば、大金が転がり込んできても不思議ではない程の。 「俺は正気だ。手を放せ」 「失礼しました。なら、尚更壊すという指示は慮られます」  この世界、ラクトヘルムには過去の積みあがった歴史の謎がチリ山のように存在しており、その真実に近付こうとするため日夜学者達が躍起になっている。それを解明する手立てになる可能性となるなら、残しておく方が必ず有益となる。 院長の考えは、ラプレには理解し難いものだった。 「この剣が子供を引き寄せた原因としてもまだそれが言えるか?」  院長の答えは意外だった。どうしてそこで子供達が出てくるのかと。 「……え?」  窮する以外に反応が無かった。  院長は先程の興奮した様子を潜めさせ、遠い目を形作る。 「俺の実家にも似たような物があった。それは家に伝わる家宝であり、双剣・ジークフリートと呼ばれる代物だ」 「ジーク、フリート……」  ラプレには聞き覚えがなかった。 「俺には剣才が無かったからか、剣に反応したのは弟の方だったがな。その時は子供には格好良く写り、気に入ったんだろう程度の印象だった。おまけに、剣を勝手に持ち出そうとして頻繁に親父に怒られていた姿を良く覚えている」
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