9/17
前へ
/17ページ
次へ
 目を少しだけ細くする。 「しかし、今日の様子を見るに、あれは双剣の方が弟を呼んでいたと思わざる終えない」  歴史を話し出す口調は熱い。院長はいつもと違い雰囲気が違う。口角を曲げながらさらに熱弁を振るう。 「諸説色々あるが、俺の家で伝えられていた口伝の話をするとだ。その剣はかつて世界に光と闇を作ったという話もある」 「そんな物が……」  たかが武器といえ、そんな能力があるかどうかは眉唾だが、実際子供はこの場所に引き寄せられていたのだ。  何かしらの未知なる力が蠢いているのは間違いないと思わざる終えない。 「そういった世界創生に携わったとされる武器は、この世界に幾つか存在している。ジークフリートと同じように役割があり、この剣の役割は……星を核を産んだと言われる物だろう」  星の核を産んだ剣。  世界を生み出したといっても過言では無い。俄かに信じ難いものだが、ここまでの大きさならば納得してしまいそうになる。  この剣にはそれだけの迫力がある。 「そして、恐るべき事に虹霓の覇王は一度その全てを手中に収め、操ったとされている」 「ですが、今現在残っている記録では、その覇王が勝利した事実は記録されていません」  ラプレに与えられた記録にもその結果は記されていない。どこかの歴史書に残っているかもしれないが、今の自分に調べる手段はない。 「覇王は名の通り武力に長けていた。しかし、武器に頼り……人を信じなかった。幾ら強力な兵器であろうと、担う側の人間が一人では勝てる物も勝てない。当然だな」  歴史というのは不思議な物だ。  結局の所、いくら強力な力をもってしても、世界を動かすのは武器ではなく人という事なのだろう。 「この剣はきっと覇王のお気に入りの物だ。手で触ると……思念を感じる。未だ尽きぬ焔の様な執念を。その思念が無垢な子供に触れ、きっとここに呼び寄せたに違いない」  少し、思い出してしまった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加