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半年前
1.
「はぁ……。」
「松永、ため息ばかりじゃ幸せ逃げてくぞー?」
隣のデスクの二年上の先輩に背中を叩かれる。今にも雪崩が起きそうな、書類の山で溢れる先輩のデスクの方が幸せ逃げてくんじゃない?
でも先輩の言うとおり、ため息をつく回数はここ半年で確実に多くなった。大卒で社会人二年目の下っ端、名札に書かれた『松永美玲』の肩書は『一般事務』。
「はぁ……。」
「あ、またため息ついた。心象悪いぞー?」
「そんなこと言われましても……。生理現象ですよ。」
「意識しなさいよ。見ているこっちまで疲れちゃう。」
パソコンの画面を見たまま先輩は愚痴る。仕事ができる人なので、口と手を同時に動かすことができる。……え?そんなの当たり前って?違う、これは才能よ。私にはない才能……。
またため息をつきそうになり、慌てて飲み込んだ。こんなことの繰り返し。新卒で入社したての頃の気持ちは、どこに行っちゃったんだろうなぁ。
今日もため息、明日もため息、一週間後もため息。きっと、一生ため息――。
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