目が覚めると、そこには

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むしろ入り過ぎて決勝1台目のハードルにスパイクを引っ掛け、いきなり転倒。助走し直しやっと全部飛び越えた孤独なゴールで、悔しくて悔しくて涙が噴き出したあの気持ちを、誰にも茶化されたくはない。 そもそも大会はまだ終わってない。フィールドが賑やかになってきた。高跳びと砲丸が始まりそうだ。 ふと転倒で捻った右足首が、何か言いたげに疼いた。 * 今日の出番は4×100mリレーの予選だ。 走順は中田先輩、堀、僕、そして藤堂先輩。 メンツに2年と僕ら1年が混じっているのは、人数が足りてないからだ。競技場に一番近い学校なのに、サッカーに偏って、陸上部員は少ない。 昨日1500を走った堀が声をかけてきた。 「アップするぞ」 眼鏡の堀は小学校からの友達で、ラーメンの話題になる度に、 ラーメン? つけ麺? と古いギャグで詰め寄り、僕の口から 僕イケメン と言わせようと企むひどくふざけた男だが、今だけは眼鏡がひどく真面目に見える。 「先輩たちは? 今日くらい4人揃って練習するのがいいんじゃねーの?」 いくらリレーが本命じゃなくたってさ。特に中田先輩なんて俊足で実はすごい人だと思っているけど、練習サボってばっかりだ。 あっちからは当の中田先輩と藤堂先輩がバトンをかざして悠々と歩いてきた。 「先輩、他の学校はバトンパス練習してますよ?」 「やりたいやつがやればいいんじゃね?」     
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