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そんなもんかな、とバッグを開きスパイクの巾着を取り出した。
既に履き替えている他校のチームが、ペンギンみたいにペタペタ前を横切っていく。スパイクのピンがアスファルトで折れないように、爪先を浮かせて歩くんだ。足を挿しこみ紐をキューっと引き締め甲に合わせて結べば、僕もペンギン。走る以外の機能まるでなしの窮屈なアイテム。
「スパイク見せてねー」
このスパイクを見に、やってきたのは審判員。確認してもらおうと脱ぎかけたらゆるゆるっと言う。
「履いたままでいいよー」
面倒なのはお互いさま。だったら遠慮なく、と言われた通り中田先輩、堀、僕、藤堂先輩が順に足を持ち上げ靴底を見せる。
「あれ? このピンダメだ。君、失格」
えー?
全然緩くない宣告に僕らはそれぞれ顔を見合わせ、ゆっくりと視線を藤堂先輩に集める。
7mmと8mmのわずかな長さ違いを瞬時に見抜く審判員にも驚きだが、初心者じゃあるまいし2年にもなってそんな凡ミスをする藤堂先輩が、信じられなかった。
先輩は頭をかきながら、母ちゃんに怒られるな、と脱いだスパイクをバッグに押し込み、とっとと帰ってしまった。
「リレーは、棄権?…ってことっすか?」
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