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霧雨は凄んでいる。じっとしてるとこの重い湿度に潰されそうで、軽くジャンプした。それでも手足が本当に自分のものなのかおぼつかない。
肩を大きく回し腕を伸ばす。両腕を振っては身体に巻きつけたり、僕は僕を確かめるのに躍起となった。いつもは目立つのがあれで、あんまあからさまには動かないんだった。
「ファイトー!」
たまに女子の歓声が座席から湿ったグランドを突き抜けていく。
これから始まる勝ち目のない勝負。先生、本当に参加することが意義なのか?
新人戦の晴れ舞台は晴れてねーし、雨だし。僕はハードルで派手に転ぶし、藤堂先輩だって。
テイクオーバーゾーンの入り口に立ち、スタートダッシュをイメージして軽く慣らす。
リレーのバトンパスを行う区間、テイクオーバーゾーンは30m。極端な話、力尽きた第一走者のバトンを90m地点でもぎ取って第二走者が110m走るのもゾーン内ならアリだ。
ただしゾーンの外でバトンを渡すと容赦なく失格が待っている。
失格のトラップはあちこちに仕掛けてある。たった一度のフライングでレッド。リレーのスタートでしくじってみろ、チーム全体に迷惑をかける。そういうのが苦手で個人競技の陸上を選んだのに、まさかまさかのチームプレイやらされるなんてな。
アンカーは任せろ、か。
先輩かっけーよ。スパイクのピン、ミスったのも帳消しだ。
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