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螢 ~明日美~
白い霧の中。この女の子が現れるときはいつも決まってこんな具合だ。
わたしは半ば呆れて、その女の子の円らな瞳をきゅっと睨み返した。だってこの女の子、わたしの前に現れると必ずと言っていいほど……
「もぅ~、懲りないねぇ~。毎朝わたしの夢の中に現れて…………うがっ!」
……そう。こうやって毎朝わたしの前に現れてはわたしの首を絞め、少しだけわたしの身体を持ち上げてくる。苦しい。でも、なぜか恐怖というものはいつも感じなくて、その女の子の態度はどちらかというとわたしに構ってほしいだけのような、そんな風にも見えてしまう。
ただ、こんな首絞めが毎日続くわけだから、そろそろわたしも精神的にきつくなってくる。
これは明らかに夢の中。わたしがこの女の子に殺されることはまずない。
それをわかっててやってくるわけだから、余計この女の子、たち悪いんだけどね。
「だって、私が毎日警告してるのに、あなたはいつも翔と一緒にいる! なんでよ!!?」
そしてこんな訳のわからないことを言ってくるんだもん。
「嫉妬もそろそろ大概にしてよね。わたしみたいなドジばっかりでどうしようもない人間にこんなことしたって、それはあまり意味ないんじゃ……」
「そう。明日美はいつもそうやって、自分は関係ないフリをする。だから私は尚更明日美をいつも許せなかったの!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! あなたわたしの何を知ってるの?」
するとこの女の子はわたしの首を絞めた手を少しずつその力を緩めていき、最後にぱっとわたしの首から手を離す。その直前まで宙に浮いていたわたしの足に、急激な負担がかかった。
「翔から離れてよ!!」
女の子はわたしの耳に響く声で、そう怒鳴り散らしてくる。
そんなこと言われても、わたしはどこか釈然としない。
だって、わたしと翔は……。
この女の子はわたしをなぜこんなに怨んでいるのだろうか?
わたしは…………
……わたしがこの女の子にしてあげられることって、なんだろう?
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