どうぞ、お大事に

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先週から薬の種類と量が増えた。 あわせて飲む水の量も増えるから、薬を飲めば空腹も幾らか紛れるのがせめてもの救いに思えた。 窓の景色を、左から右に鳥が横切るのが見える。 彼らは朝を知っている。 彼らは夜を知っている。 朝に起きて夜に眠る、 そんな人間らしい生活を最後に送ったのはいつの事だったか分からない。 眠気に鈍感になった私の身体は重量をも手放し、指で軽く触れれば崩れる危うさを手に入れて、空気の流れを感じない街を漂う「なにか」になっていった。 「お前がいなきゃ困るんだ」 あなたはどうしてそんな事を言うの。 あなたには、あなたの人生があるように 私にも私だけのものが、遥か昔にあったような気がした。 あなたの夢が私に覆いかぶさる。 重みに耐えきれなくなった私の身体は圧力に悲鳴をあげるけれど、あなたの腕にしがみつく私の言葉は艶を帯びてあなたの耳へと届く。 激しく私を揺さぶるあなたの息は熱いから、私もそれに応えたくなって、あなたの心を包み込む。次第に熱を持つ心が私の中で果てていくのが分かる。まるではじめから"そうなることが"当然のことのように、あなたは無言で私に訴えかける。 「どうぞ、お大事に。」 今日に満足して私の部屋から出ていく あなたに、 私は言葉をかける。 窓を見ると、 夜が更けていくのが分かって、 私は眠りについた。
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