3 Side :バイトちゃん。

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「ところで。 ここに捨てられたモノが2つ程あるのですが。 拾いますか?そのままにしておきますか?」 彼が左手をぱっと広げると―――出てきたのは私が投げ捨てたリング。 私は手を延ばそうとしつつも逡巡してしまい、そのまま目を伏せてしまった。 「…こら。 そのままにしとく気?」 からかうような声に、私は躊躇いつつ訊ねる。 「……拾う、を選んでも、いいの?」 「むしろ選んで貰わないと困る。 これ、似合うの桐子だけって決めてるから。 で、これを今すぐ拾った方限定のおまけで粗品もプレゼント! ――如何でしょうか?」 どこぞの通販番組の真似? 粗品って……おまけにしたら随分豪華よ。 彼の右手の親指が指してるのは彼自身。 泣きだしたかったのを堪えていた筈なのに、思わずくすりと笑ってしまった。 彼はそんな私の表情を見逃す筈も無く―――甘く優しく笑う。 「いつも俺の隣で笑っててよ。 もう、二度と俺の事、捨てないで」 はい、と答えると。 彼は私の左手薬指に指輪を通すと、その指にキスを落として呟いた。 「My Lady」
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