逆転の発想

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逆転の発想

 私のクラスには、とても変わった女の子がいた。  いつもひとりで、ずっと本を読んでいるのだけれど、そのタイトルが不謹慎なものばかりだった。  そういう趣味、として片づけられるようなものではなかったため、先生からも注意を受けていたようだが変わった女の子は変わらずに読み続けていた。  そして、ある日私は自然とその女の子に話しかけてしまった。 「何の本を読んでいるの?」    あれ、なんで私はこんなこと聞いたんだろう。 「殺人とマインドコントロールを結びつけた本だよ。」 「へぇ、面白そうだね」  面白そう? そんなこと私は思っていない。 「うん。特に興味深かったのはね、需要と供給の話」 「どうやっやるのかおしえてよ」  やるって、何を。私は何を? 聞いているんだ。 「供給はね、需要はあるからされているんじゃないの。供給があって、需要があるの」 「逆でしょ?」 「例えばね、自動販売機の需要は大きいと思うけれど、それが無かったとすれば人々はスーパーに買いに行くと思うわ。その方が安いし大きいのもあるし。別に、自動販売機がないことでどうしようもないほど困る人はいないと思うの。ただ、そこにあるからつい買っちゃう。供給されているから求めてしまうの。」 「そんなものかな・・・・・・」 「そんなものよ。じゃあ実際にやってみましょう」  その変わった子は、私の手を引きながら廊下に出た。 「あそこ。あそこにあるでしょ?」  そう言いながら指を指していた。  その先には円形をした赤い何かがある。 「火災報知器よ」  火事が起きたときにボタンを押すことで作動する報知器だ。  それがどうかしたのだろうか。 「押すわよ」 「え?」  少女の指は既に赤い円の中心へと伸びていた。  強く押す――そう書かれた位置をしっかりと押し込む。
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