リスト。

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男は捨てたもののリストを作成していた。 今まで捨てたもの、 これから捨てるもの。 全てをリストにし終えてから死のうと心に決めていた。 己が捨てたものなどリストにしたところで無意味だし、何が変わると言うことも無いだろうと分かっていた。 ただ、捨てたものと捨てるもの、全てを書き出して己のぐちゃぐちゃの脳内を少しでも整理して、これだけのものを捨てた。とそれらのリストを眺めながらほくそ笑んで死にたいというささやかな願いから始めた作業だった。 リストはA4サイズのプリント用紙に鉛筆で書き出した陳腐なものだった。 己のちんけな人生にはそれぐらいがちょうど良いという俯瞰も織り交ぜられていた。 まずは長方形の白紙に見出しを書き出す。 捨てたもの。 汚い字だ。大きさもまばらで、文字も斜めに並んでいる。 丁寧に書いたつもりだったが、他人が読めば殴り書きにも近い代物だったろう。 だが男はそれでかまわなかった。 男がこの世を去った後でこのメモ書きを見る者こそいるとすれ、男が自ら誰かに見せようと思っているものではないからである。 男に読解出来たならばそれでいい代物なのである。 男は続けて鉛筆を走らせる。 自分。     
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