最後の冬は君と一緒に…

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「おかえりなさい」 復員船から降りて出迎えの人ごみを歩いていると懐かしい声が聞こえた。 ボクは担いでいたバックを投げ捨てると彼女に近寄った。 「ただいま」 厚く抱擁を交わした。彼女はボクの恋人だ。兵士として戦場に赴いたのは約2年前。 電波制限のせいで手紙でしか無事を知ることはできなかったけど、久々に顔を見ることが出来てすごく安心した。 「うれしい…帰ってきてくれた」 「うん、キミが帰ってほしいって言ってくれたからね」 戦争が終わることが決まってから彼女から手紙が届いた。 それは『会いたい』というメッセージだった。ボクはそのメッセージを見た時、不覚にも泣いてしまっていた。 本当は戦争が終わる前に帰ろうなんて思っていなかった。2年も会えなかったボクと会いたいなんて思いもよらなかった。 この戦争は本当に理不尽だった。どんなに優秀な人であっても理不尽に殺されていった。 ボクは優秀で有能だったけど、それ以上に幸運だったのだ。 戦場に行くことはほとんど自殺しにいくようなもので彼女もボクのことを諦めていたと思っていた。     
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