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最後の冬は君と一緒に…
夏になる頃には終わる。
そう言われていた戦争はもう何年も続いていた。
サクラが咲く季節に始まったこの戦争は生存戦争と呼ばれていた。
敵は人間ではなく異星人。ある日、この星に落ちてきた巨大隕石はマザーシップと呼ばれる異星人の宇宙船だった。
マザーシップの落下によって都市が一つ壊滅したがそのころの人類は傲慢だった。
たった一機の宇宙船くらい人類が力を合わせれば勝てると思っていた。
しかし、現実はそうあまくなかった。生物としての異星人は人類と同じようにひ弱だったが持っている技術には雲泥の差があった。
防弾チョッキをいとも簡単に貫通するレーザー銃に放射能でさえも通さないバリア。
たしかに集団で戦えば倒せないわけではなかった。だが、敵を1体倒すたびに数万単位の人間が殺された。
そのため、15歳であったボクが兵士として戦場に行くのは必然だった。
自分で言うのは少し恥ずかしいけど、ボクは兵士として有能だった。
装備で勝る敵に対してボクを含む部隊の皆は何度も交戦し、そして、生き残ってきた。
長く続く戦争のおかげで培うことができた異星人と戦う手法のおかげもあるが、やはり部隊の皆が優秀だったのだ。
戦争には負けていたがボク達の部隊は敵を何体か屠り人類の皆からも賞賛のメッセージが送られた。
嬉しかった。
内地にいる故郷の友人や家族……恋人からもいろいろなメッセージが送られてきてボクは戦うことに希望を抱いていた。
それは部隊の皆も同じで何度も起きる戦闘でかけがえのない戦友を失ったとしても明日はあると希望を抱いていた。
でも、そんな戦争ももう終わり。
夏には終わると言われていたこの戦争は何年も経ったこの冬に終わる。
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