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上へと上がる。ガラス張りの景色は子供の頃に連れて行ってもらった電波塔並みに高さになっている。
そうして部屋に案内される。
「3日後に強制スタートとなりますのでそれまでにキャラメイクを終了させてください。なおVRの中の時間は現実の3.33倍となります」
そういい看護師は去って行った。
部屋に残されたのは自分1人、私だけだ。入院者が着るような服を着て、ベットに置いてある機械を見る。外はもう真っ暗だ。
天井に着いている照明もいいが、一旦消し。今から装着する機械の淡い緑色の光と、都会のビルの明るさのみにする。
「おぉ」
窓の景色は綺麗だった。昔は100万ドル夜景なんて言葉があったが、この夜景はそういった景色なのだろう。
暫く景色を見る。結局、上司から貰ったチケットに流される形でここに来てしまった。
「確かにゲームは好きなんだがなぁ」
自分は俗に言うコントローラーゲーマー。VRやARのようなものには殆ど手を出したことはなかった。
淡い緑の光を出す機械を少しなで回し、ふと今までの人生を振り返る。
子供も嫁も居なく。かといって仕事に全力なわけでもなく。程ほどにやって程ほどに生きてきた。そりゃあ辛いこともあったが死ぬほどではなく。かといって人生の絶頂期のような事も無かった。
「セカンドライフ……か」
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